この度天皇誕生日に際して、社会福祉事業奨励のため、当施設が取り組んできた事業に優良民間社会福祉事業として天皇陛下より「御下賜金(ごかしきん)」を賜りましたことをご報告いたします。
栄えある栄誉を受理するため、静岡県庁に理事長以下、施設長、副施設長が赴きました。「御下賜金(ごかしきん)」とは
毎年、天皇誕生日に際し、天皇陛下の社会福祉事業御奨励の思召により、各都道府県及び政令指定都市の優良な民間社会福祉事業施設・団体に対して下賜される金員のことで、1県1団体に贈られるものです。
【当施設の取り組み】
当施設は当初より入居者様に対して「オムツ」を使用しておりました。使用の理由としては処理に苦労せず、また簡単に処分ができるという事で使用をしてきましたが、交換するのが遅れることにより衛生的に不潔になり、これまで課題であった利用者の便汚染等による「尿路感染症」が当施設でも散見されるようになりました。
これに対し当時の排泄責任者が排泄の研修に行った際「オムツゼロ」を推奨する講師との出会いにより、当施設でも2010年から「オムツゼロ」への取り組みを始めることとなりました。
しかし取り組んでいく中で、介護従事者の負担が増加するため、職員からは取り入れることへの不信感がつもり、中々徹底することが厳しい状況でした。
この「オムツゼロ」の取り組みを推奨することは、高齢者がいつまでも自分らしく生き続けたいという思いを尊重し、生活リハビリにつながっていくことへの取り組みであることを、ことあるごとに説明し理解を求めてきました。
結果、当初は試行して取り組んできたものが、2013年(平成25年)より「向上委員会」を設置し施設全体の取り組みとして本格的に取り組む姿勢を明確にすることにより、施設全体に浸透することにつながる結果となりました。
尚、主な取り組みについては下記のとおりです。
「オムツゼロ」への具体的な取り組み
1.取り組みの主なメリット
①1日1回以上はトイレに座ることを実践、利用者様の生活リハビリにつながっている
・トイレに座ることにより、腹部へ圧力をかけることから、自然排便があり下剤、浣腸、坐薬の減少につながった
・利用者様によっては、以前は感じられなかった尿意や便意を感じ、意思表示することにつながった
②利用者の陰部等が清潔に保たれるようになった
・トイレに座ることにより汚れにくくなり清潔が保たれることにつながった
・トイレに座ってもらうことにより、利用者の体調の変化に気づくことにつながった
③利用者を知ることができる
・排泄表を作成し、排尿のサイクルを知ることにより排泄パターンを分析し、トイレに座るタイミングを体に覚えさせ生活リズムが整うことにより便失禁予防につながった
・成功体験は利用者様や介護職員に対して成果として報告し、特に職員にはチャレンジ精神への醸成につながった
④「オムツゼロ」への取り組みが、その他の取り組みに波及している
・この取り組みにより、水分摂取の取り組みや運動の取り組み、食事の取り組みにつながり、また、「お日様プロジェクト(陽に当たり体の抵抗力をつける取り組み)」などの新しい取り組みに繋がり、当施設が取り組んでいる総合的な取り組み「生きがい支援への取り組み」へと繋がっていった
⑤現在の取り組み状況(令和4年10月末時点)
・体調や医療的に見て、トイレの座位が困難な方を除き「オムツゼロ」の取り組みを行っています
※終わりに
「オムツゼロ」の取り組みが果たした影響は、利用者を知ることやその他の取り組みに対して前向きに取り組んでいけたこと、特にいろいろな支援へのチャレンジ精神につながったことは当施設としてもかけがえのない取り組みでありました。この取り組みに対して評価を受け「御下賜金(ごかしきん)」を賜ることができましたことは関係団体や関連官庁のご支援の賜ものと感謝申し上げます。